フルマラソンやウルトラマラソン後に、なぜ浮腫むのか?

フルマラソンや100kmなどのウルトラマラソン後に「脚がパンパンに腫れる」「靴が履けなくなる」という現象は、多くのランナーが経験します。
私も、24時間走を走った後は、脚が象のように腫れます。

これななぜか?
これは単純に水分が溜まっているだけではなく、「炎症」と「血管からの水分漏出」が主な原因です。


① 筋肉の微細損傷(炎症)

42kmや100km以上走ると、一歩ごとの着地衝撃(体重の2~3倍)が何万回も繰り返されます。すると、

  • 筋線維
  • 筋膜
  • 毛細血管

に細かな傷(微細損傷)ができます。
体は傷を治そうとして炎症反応を起こします。
炎症が起こると、

  • ヒスタミン
  • ブラジキニン
  • プロスタグランジン
  • 各種サイトカイン

などの炎症物質が放出されます。


② 毛細血管の透過性が上がる

炎症物質が出ると、毛細血管が「修復のために免疫細胞を通してください」
という状態になります。
すると血管の壁に隙間ができます。
本来は血管内にある

  • 水分
  • アルブミン
  • 電解質

が血管外へ漏れ始めます。これが浮腫の始まりです。


③ 重力で足に水が集まる

マラソンでは数時間立ち続けています。さらに、

  • ふくらはぎ
  • 足首
  • 足の甲

は心臓より低い位置です。
漏れた水分は重力で下へ集まります。
そのため、

  • 足首が消える
  • 靴が履けない
  • 指で押すと跡が残る

ようになります。


④ 血流・リンパの低下

レース後は筋肉が疲労しています。
すると、

ふくらはぎの筋ポンプ作用が弱くなります。
本来なら歩くだけでも筋肉が「ギュッ」と収縮して静脈やリンパを押し上げます。
しかし疲労すると、戻す力が弱くなるため水分が下に滞ります。


⑤ 筋グリコーゲンの回復

レース後は糖質を補給します。
筋肉ではグリコーゲンを蓄え始めます。
グリコーゲン1gにつき約3gの水分を一緒に保持します。

つまり、筋肉の回復過程でも一時的に水分量が増えます。
これは悪い浮腫ではなく、回復に必要な反応です。


⑥ ナトリウム・ホルモンの影響

レース中は大量の汗をかきます。すると、

  • ADH(抗利尿ホルモン)
  • レニン
  • アルドステロン

が増加します。
これらは「水分を逃がすな」という命令を出します。
そのためレース後もしばらくは体が水分を保持しようとします。


ランナーの浮腫をまとめると

① 筋肉が壊れる

② 炎症が起こる

③ 毛細血管から水が漏れる

④ 重力で脚へ集まる

⑤ リンパ・静脈が疲れて戻せない

脚がパンパンになる


どう対処すればよいか

① 水分をしっかり飲む(最重要)

「浮腫んだから水を飲まない」
これは逆効果です。

十分な水分補給により、

  • ADHが下がる
  • 腎臓の血流が改善
  • 尿量が増える
  • ナトリウムも排泄される

結果として浮腫は改善しやすくなります。
ただし、水だけを大量に飲むのではなく、汗で失われたナトリウムなどの電解質も適切に補給することが重要です。


② 歩く

軽い散歩が最も効果的です。
筋ポンプが働きリンパと静脈の流れが改善します。
完全安静より回復は早くなります。


③ 脚を高くする

寝る時に脚を10~20cm程度高くすると静脈還流が改善します。
私も、ウルトラ後は毎回行っています。
夜間の浮腫改善には非常に効果があります。


④ コンプレッションソックス

適度な圧迫で、

  • 静脈還流
  • リンパ還流

を助けます。特にレース後や移動時には有効です。
私は、レース中も履いています。


⑤ 栄養補給

回復には

  • タンパク質
  • 糖質
  • ビタミンC
  • ビタミンB群

などが重要です。
長い走行距離をこなすランナーでは、十分なタンパク質摂取が筋修復を支え、炎症からの回復にも役立ちます。


⑥ 冷却と温熱を使い分ける

レース直後(24時間程度)は炎症が強いため、アイシングや冷水浴で炎症や痛みを抑えることが有効な場合があります。
その後、炎症が落ち着いてきたら、ぬるめの入浴や温熱で血流を促進すると回復を助けます。
つまり、交代浴です!


ウルトラマラソンの場合の注意点

100kmや24時間走では、浮腫は単なる「水分の摂り過ぎ」ではなく、筋損傷・炎症・ホルモン変化・毛細血管からの水分漏出が複合して起こる生理的反応です。
通常は数日で改善しますが、息苦しさ、片脚だけの強い腫れや痛み、尿が極端に少ない・濃い、体重が急激に増えるなどの症状がある場合は、深部静脈血栓症や腎障害などの可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。
ランナーにとっては「水を抜く」のではなく、適切な水分・電解質・栄養補給を行い、血液とリンパの循環を回復させながら筋肉の修復を促すことが、浮腫を改善する最も理にかなった方法です。

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この記事を書いた人

楢木十士郎